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火薬御飯

Category :  アニメ・特撮・映画
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 GW明け。例年なら夏コミの原稿に手を付け始める頃だ。バイク同人だし、今期アニメ「スーパーカブ」には皆一言ありそう。カブのユーザーは何十年も前から古今東西・世界中にいるし、ディープなマニアの世界も無限だ。俄か知識や僅かな経験じゃ太刀打ちできない。でも、アニメの感想なら共感したり、違う解釈に逆に感心することもある。
アニメ2021スーパーカブMD90
 このジャンルのアニメにありがちな評論が無意味なツッコミ。JKがこんなのありえない…といったネタだ。バイクだろうと戦車だろうがJKが乗るから画になるのであって、オッサンのソロキャンじゃホームレスにしか見えない。その類でいうならMD90はふつうは民間には出回らない。昔は官給の払下げがあったが今はたぶん処分されてしまう。古き善き時代の話だ。

 オートバイとしてのカブに主人公が乗るようなシチュエーションで印象的なのは、やはりマガジン連載の「バリバリ伝説」序盤の名シーンだ。さすがしげの先生。OVAでこの場面が省かれてしまったのは本当に惜しい。ハチロクでGT-Rをブッちぎる走りの美学はこの頃から温められていた。
バリバリ伝説スーパーカブ
 「誰よりも速く…」を公言するグンにとって、カブは蕁麻疹が出るほど遅いバイク(作中のはハイチューンド)。バリ伝のマガジン連載開始は私が高校の頃の1983年から。バイクブーム真っ只中の当時(今では信じられないが)カブは死ぬほどダサい乗り物だった。ユーザーはオッサンかジジイ。ベスパじゃあるまいしJKはもちろん男子が乗るのは恥なくらいの代物だ。オッサン臭いというか、それだけ庶民の足として、「一家に一台」と形容されるほど今よりも普及し、そこらじゅうで乗り回されていた。

 最近はあまり見かけないが、カブといえばソバ屋の出前とか新聞配達のイメージが強かった。私が経験者だから言うが、新聞配達員は1日のうち少なくとも4~5時間は原付に乗っている。新聞屋と郵便配達が最強のカブユーザーだったが、最近はデリバリースクーターへ更新が進んでいる。
新聞屋
 カブをデリバリーバイクの座に押し上げたのは、ホンダが開発した「自動遠心クラッチ」という新機軸。遠心力で動く錘でプレートを圧着させる機構は、スクーターの変速機に似ている。無論カブのメカが先で、スクーターに応用されたものだ。このVベルト式無断変則は今では金属ベルトを用いた四輪車用のCVTにまで進化。この機構にヘンに意匠やパテントを掛けなかったことは創業者様ご健在当時の歴史的偉業だったと思う。中型スクーターがオートバイの1ジャンルを確立したのも、各社にこのメカが普及できたからに違いない。それに比べ、バッテリーや電球に妙な独自規格を設け、カブの形状にまで特許申請してしまう今のホンダは尻の穴が小さい。

 乗ってナンボのカブなので、実際に手を汚した話。私は新聞配達員としてカブを乗り回した他に、いわゆる輸出業者に雇われていた時期があった。その頃に現役だったのが小熊が乗る形式名BA-AA01型で、1998年から2006年まで生産された機種。マフラーガードが付いたのが特徴で、この次の型がインジェクション化されたJBH-AA01型。クランクケースが黒く塗装されているのが外観上の特徴。ヘッドカバーが冷却フィンのない四角い箱状。マフラーに触媒が付いたため独特の共鳴音が混ざった音がする。
BA-AA01 1998年~
 BA-AA01頃からカブも海外生産に移行し、耐久性が落ち、焼き付きを起こしたエンジンも見掛けるようになった。JBH-AA01もトラブルが多かったと聞く。そのためか2012年頃から国内用カブの生産は熊本工場に戻り、汚名返上に努めている。またBA-AA01型の時期は、TWやビッグスクーターが闊歩するストリートカスタムが氾濫。カブの人気は一時低迷していたように思う。この時期ホンダが投入したのがリトルカブ。だがこれら旧型ボディの生産は2012年で終了。輸出も相変わらずで旧型の個体数は減る一方だ。生産終了から10年以上経過し、程度の良いオールドカブが欲しいなら今のうち。エンジン本体はリビルドからツインカム4バルブや排気量200㏄越えのコンプまで手に入るなので、モノコックのカブは貴重だと思う。

 たしかにカブはホンダの特許足り得るかもしれない。だがカブのスタイリングは昨今のような屈指のデザイナーが計算尽くめで描いたものではなく、乗り手の仕様目的を基にした必然性から発生したものだ。根拠はないが、ベースとなったのはイタリアの名車ベスパではないか?と思う。
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 ベスパのボディーはプレス鋼板を繋いだモノコック構造。カブも車体後半部分は同じ構造をしている。それに開発当時まだ舗装道路が少なかった交通インフラに合わせた大径ホイールを組み合わせる。この前後ホイールも発売当時から17インチという最適地に設定されていた。ベスパはエンジン本体がスイングアームを兼ねるが、カブはチェーン駆動にすることで後半のモノコックボディーと相まって荷台の積載量が増えた。破損しやすいレッグシールドを樹脂製にすることで整備性も確保。
 細部の線図は、創業者が後に「神社仏閣形式」と称する日本の伝統的な曲線美を取り入れ引かれてている。本田は海外の模倣を嫌い、日本の伝統的なデザインのフォーマットを取り入れようとしていた。そのために本田は風景や古い建造物のスケッチを繰り返し、そのエッセンスの抽出に励んだ。海外の乗り物や建物にも、かつてはその国や地域ごとに長い年月を掛けて最適化された角度や曲率が存在した。現在では人材のグローバル化が逆にそれらを平均化してしまう弊害に陥ってしまっているが。
 だからカブに限らず昔のクルマやバイクのデザインは、その国の原風景によく溶け込んで馴染む。そうした既視感を含んだデザインは、乗り手に安心感を与え、緊張感を解し、機械を操作することに余裕を持たせる。
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 カブをそんな日本の原風景の一部として描くのが新海誠監督。宮崎駿や庵野ほどメカに対するコダわりがないからだろう。おかげでカブは背景の一部として牧歌的に描かれ、かえってより美しく見える。人物が乗ると、そこに動的な空間が生まれ、生き物のように躍動する。マニアが最も期待する一体感や擬人化が図らずも完結。新海作品のカブは美しく愛おしい。
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 メカにこだわらないから過度にレトロでもないしドノーマル。オシャレの度合いは世間なみ。だからあくまで現行機種だが、最新作では、ちょっとスポンサー様の威光が強かったかな。ついでに現行のカブ(AA09)のカタチも個人的には好きになれない。キレイ過ぎる。線図のデザイン優先し過ぎて(失礼だが)美大生の卒業制作のように見える。クルマやバイクは、カタチから機能がわかるようなやつがいい。実用車はもっと野暮ったい(よく言うならワイルドな)ほうがいい。だからオフローダーは機能美があってカッコイイのだ。なによりカブは、誰もが子供のころから(日本じゆう・世界中)何処でも見掛けたバイクの原体験。そして働く乗り物の代名詞。「三つ子の魂百まで」。誰人もこの基本ソフトから逃れることはできない。

テーマ:スーパーカブ系 - ジャンル:車・バイク

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