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火薬御飯

Category :  アニメ・特撮・映画
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 戦前の純文学の一つである「闘病日記」には、なぜか引き込まれるものがある。人の不幸は何々とか言うが、よもやよもや、自分が書く日が来ようとは。まあ、普通に書いても陰気な文章の私。メンヘラの心を掴めるかもしれない。
今年(令和3年)2月下旬。午後8時頃。国道沿いのコンビニに寄って、原付を出そうとした直後倒れて、救急搬送。車内で救急隊員の「20時20分…」という無線の声が聞こえた。救急車に乗るといつも思うのは「部屋を片付けておくんだった」とかショボい後悔。この時はまだ「すぐ帰れる」と思っていた。静岡日赤に運び込まれ、検査の結果は脳出血。左半身麻痺。医師は「良かったねぇ」という。「バイクで走ってる最中だったら大事故だったよ」だと。それな。異世界転生するとこだった。病室に向う途中の時計は、午後11時を指していた。通路は半灯で病室は消灯していたが、室内は何か騒がしい。脳神経科病棟のため、患者の奇声や呻き声でうるさかった。映画「アマデウス」の最後のシーン、気が狂ったサリエリが精神病の施設にブチ込まれる場面を思い出す。私もかなり衰弱していたためか、うるさいのが気にならない。病院なんて静かだったら逆に気味悪かったかもしれない。
それから3~4日は食事が全くノドを通らず、一週間ほどして車椅子ごと体重を測ると、体重が15キロ減っていた。80キロを超えたデブが実に2割減量!これだけは福音。
入院なんて、グチを言い出したらキリがないが、この日赤病院は、食事はそれなりに良かったと思う。ほぼ流動食だったが、食材の上に桜の花びらが飾られていたり、鍋もの風とか、「ほうとう」とか、季節感のあるレシピが泣ける。だが同情されるのもなにかミジメな気がする。談話室のテレビから流れるADOが脳に響く。「うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ。アナタが思うより健康です!」…メンタルが腐り始めた。
入院10日目くらいからリハビリが始まった。理学療法士先生はよく指導してくれた。院内のリハビリは私と同じく脳症の患者ばかりで、老人や長期入院でブッ壊れた奴も多く、妙に馴れ馴れしくワガママ。療法士は皆若いが、怠ける患者には容赦なく厳しい。そこで逆ギレする患者もいるから〇したくなる気持ちもわかる。最近、そんな熱心ゆえに厳しい先生に悪い評価を付けるバカな奴もいるが、全くお門違い。またジジイの中には、病院をキャバクラと勘違いしているお盛んなのも多い。看護婦が優しいのは仕事だから。それに入院をエンジョイできるなんて充分健康だろって。
ところで、この頃はコロナが酷い時期で、外出や面会は原則禁止。病室とトイレ以外移動もできない。これではマトモな人間でもおかしくなる。症状が安定し後はリハビリだけなので、退院して自宅から通院リハビリを希望した。ところがケースワーカーという御局が、執拗に入院療養を薦める。というか、此方の希望に耳を貸さない。結局このCW、関連のリハビリ病院に患者を送ることが営業目標だったらしい。医療でも福祉でもなく、これは完全に商売。だが患者というのは立場が弱く、病院関係者が承諾しないことは絶対にできない。逆に、コイツ等の一存で患者をいくらでも留めて置くこともできる。理不尽な話だが、これが現実だ。
しぶしぶ関連のリハビリ病院への転院の手続きに入った。
その後、帰宅も許されず、同日中に、日赤の関連の医療法人O&R「静清リハビリテーション病院」に車椅子のまま転院。建物は比較的新しいのだが、4人部屋の病室は更に狭く、窓も小さい収容所のような所。病室前はホールのような空間で、テーブルやリハビリ器具が置かれ、数十人が入り乱れ、年齢層は軽く70代以上。奇声を発する老人がいたり一日中騒がしい。勤労世代はほとんど見当たらない。同室の入所者は(あとでわかったことだが)ほぼ行く宛もない長期療養者ばかり。部屋にはムダにキレイな装飾がされているが、それが返ってナチスの絶滅収容所を思い出させた。
食事は殺風景で看護師もあまり態度が良くない。リハは午前と午後、一日二回一時間づつ。もちろん外出は禁止。リハ以外の時間は病室で過ごすしかない。同室は60代くらいのジジイ共で、テレビを見ておおげさに歓声を上げるバカや、用もないのにやたら電話を掛ける電話魔など人格破綻者の養豚場のような所。ケンカになっても片手で捻れそうな奴ばかりだが、マジで気持ちが悪くて、目を合わせないようにしていた。うるさいとか眠れないなどと溢そうものなら、簡単に睡眠導入剤を処方される。それでなくても複数投薬のせいで、アタマはボケて身体の調子も何かおかしい。ほぼヤク中状態。さすがに一か月を超える入院で、読書もSNSも飽きてしまい、外出の許可を求めるが、通らない。…というか、看護師共の患者をナメたような態度にも嫌気が差してきた。こいつら患者を「物」としか思ってない。
施設内で、何度かコロナが発生する。すぐに隔離・転院させたということで口外されなかったが、移動制限は厳しくなって、看護師共の態度も更に悪くなる。頭にくることも増えたが、何しろ此方は身体障害者。しかも建前で入所者は「任意」で入院治療していることになっている。患者を長期留めて稼働率を上げれば、後は入院費で利益になる。結構な商売だ。こいつらの金儲けに付き合わされる気はない。
4月に入って、人事異動とかで、療法士や担当の面子がだいぶ変わった。新任の挨拶にくる看護師を見掛けるようになる。担当に顔を覚えられる前が逃げ出すチャンス。
4月2日、午後くらいからこっそり荷物をまとめ始める。夕食が終わった6時15分頃、ベッドにわざと新聞や雑誌を散らかし、荷物を車椅子に積み込んだ。知人に午後6時30分に駐車場に迎えに来てくれるよう頼んでおいた。
6時20分、搬入用のエレベーターで一階に降りて、防犯カメラに注意しながら従業員の通用口に向う。ここからはカードキーがないと入退出ができないので、退社する者が来るのを待った。幸い見覚えのない女の従業員が3人ほど来たので、扉が開いたところで後に付いて外に出る。バレていない。駐車場脇に隠れていると、友人の車が来た。この時間は長かった。辺りは既に暗い。闇に紛れて無事脱出に成功。
実家に戻って、夜9時頃。院長の奴カンカンに怒って電話を掛けてきたが後の祭。ASTALAVISTA, Baby !
キチ○イ病院を抜け出して、実家のリビングだったが久々に爆睡。翌日から新たに通院リハビリ病院を探すなど忙しくなった。保険関係の手続きとか何かと面倒臭い。
それから八カ月になる。幸い会社はクビがつながっていて、僅かだが傷病手当など戴きながら復職の機会を伺っている。退院(脱獄)から二ヶ月目くらいして原付スクーターに乗ってみた。ある夜、時速30㎞くらいで走っている時、道を横切った盛りの付いたバカネコが激突して派手に転倒。流血の惨事。踏んだり蹴ったりの一年だったが、異世界でやり直すこともなく、まだ現世だ。病院はいずれ晒してやる。《完》

テーマ:日記 - ジャンル:心と身体

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